プロローグ『2015』

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麗音は静かに息を吐くと、腕を組むのをやめた。 長い白髪が舞うと同時に、動く。 動いたのは男たち、二人の男は同時に腕に何かを召喚する。 麗音がムスッとする。 「召喚系か…二人とも同じ能力とは」 二人の男はメリケンサックを両手につけていた。 少し形は違うものの、同じメリケンだ。 「教育的指導だ、歯を食いしばれ」 麗音が消える。 彼女の能力は知っていた。 『移動系』の高速移動。 ただの高速移動ならそこらへんにいる。 彼女の高速移動は一般人の視覚、いや強化されているメフの視覚ですら捉えられないかもしれない。 「一人…か」 倒れたまま、グラハムが呟く。 男の一人が、麗音の右ストレートを頬に受けていた。 おそらく脳震盪が起きたのだろう。 白目になって倒れた。 「うっ、ちっ!」 倒れた男二人を置いて、一人は走っていった。 グラハムは上体を起こして壁に寄りかかる。 「いつみてもメフの喧嘩は人間技には見えねぇな」 「そういうものだ…ただメフを差別するようなことは言うものじゃないな」 少し咎めるように言う。 その麗音を見て、グラハムが笑って一言。 「見てたなら助けてくれよ…」 「うっ…それは、イロイロあってだな」 そう言って、麗音はグラハムの腕を首に回す。 そして、グラハムを立たせた。 「痛い痛い!」 「我慢しろ!それでも男か!」 「俺はノーマルなんだからかってが違うんだよ」 そう言って溜息をはく。 麗音はゆっくりと歩き出す。 グラハムもそれに合わせて歩いていく。 「車まで行くぞ、そこに停めてある」 「どうも」 グラハムは、いまだ痛む体を支えてもらいながら歩いていくのだった。
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