プロローグ

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目を開けると、見慣れた天井があった。そりゃそうだ、俺の部屋なんだから。 何故少し疑い気味かと言われたら両手足に普通に家で寝てたら感じないはずの違和感を感じたからだ。心当たりは特にない。だが違和感の元は目覚めてすぐに気付けた。 両手に手錠、両足をベッドの端に縄で括り付けられていたら、そりゃ誰でも気が付くだろう。 昨日の夜、自室のベッドに確かに普通に寝たはずだ。だからこんな状態になることは有り得ない。因みに俺はこういうのを好む人種ではない。 今俺は様々あって一人暮らしをしてるから家族の誰かがいたずらした、ということはあり得ない。 ……てことは、アイツしかいないだろうな。心当たりの人物が一人だけ浮かんできた。というか、その人物は以前も同じようなことをした気がするから確実だろう。最もうろ覚えだがな。 思考を密かに巡らしていると、俺の足元、丁度部屋の扉からガチャリ、と取っ手を回す音がした。 扉が開き、入ってきた人間は案の定、その心当たりの人物だった。 肩まで伸びているさらさらした黒髪を揺らしながらそいつはこの部屋に入ってきた。 我が高校の制服を身につけた心当たりの人物であるこの女の子。そいつは俺の『恋人』に当たる人物だった。 「……あ、起きた?おはよう優くん♪」 我が恋人の綺麗な顔は、俺の方を向き、にこりと微笑みかけた。
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