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「………………。」
今の気持ちを言うなら、呆れた、としか言いようがない。そういう意味で絶句した。
「ねぇ、どうして黙ってるの?びっくりしないの?優くんの家にどうしているのか、とか家をどうして知ってるのか、とか色々あるよね?」
俺が黙っているのが意外なのか、不思議そうな顔をしていた。頭の上に疑問符でも乗っかっていそうだ。
普通ならそう聞くであろうことを彼女は言うが、正直聞く気にはならない。無駄な気がする。
俺の彼女、石田真理菜は何というか、好きな奴の為(?)なら何でもできるような人だ。鍵を掛けてあるはずの彼の家に不法侵入なんてことは軽くやってのけるだろう。ましてや好きな奴の家の場所を調べ挙げるとかなぞ、真理菜にとっては赤子の手を捻るようなものだろう。
「お前がやりそうなことだからな。」
俺は短く答えた。
「私の事はお見通しってわけなのね。あーあ、優くんを驚かそうと思ったのに。まぁ、心が通じ合ってるって証拠だもんね?」
真理菜は目を輝かせて言う。
「さぁな。」
俺はまた短く答えた。通じ合ってるとは到底思えない。単純に真理菜の行動が分かりやすいだけだからな。そして逆に俺の気持ちが通じてない。
まぁ、特に何とも思ってないがな。
「縛ってんの、解いてくれ。」
このままはさすがにまずいだろうと思った俺は手錠の付いた手首を真理菜に見せた。今日は学校だ。このままじゃ学校どころかどこにもいけない。
「んー、ちょっと待って。」
そういって真理菜は近づいてきた。外してくれるようだが、真理菜には別な目的があったようだ。
「……んー、良い匂い。優くんの匂い……ベッドの上だからいつもよりも凄く匂いがわかるよ。」
真理菜は俺の胸元に抱きつき、匂いを嗅いでいる。俺の匂いがどうしてそんなにいいものなんだろうか。理解しかねる。
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