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「……まだか?」
「ん~、もう少し~。」
かれこれ数分、十数分くらいは抱きついている。因みに登校時刻は8時15分、現在時刻は7時50分。学校行くまでに掛かる時間が20分。
つまり、ギリギリだ。
「学校、遅刻するぞ。」
時計を見ながら言ってみたが、一向に動く気配は無かった。
「ねぇねぇ、優くんはどう?私の匂い。……臭う?」
真理菜は顔を近付けて不安げに聞いてきた。
「臭うわけじゃない。」
はっきり言うとむしろ良い匂い。かつて嗅いだことのある、暖かい香りに似ている。懐かしく思うが、その時のことなど思い出したくない。
「そう、良かったぁ。」
臭うわけじゃないと知ってなのか、真理菜はホッと息を吐いた。
「嫌な臭いって言われたらどうしようかと思ったよ。」
「で、手錠。」
再び手錠を見せると、思い出したようにポケットから鍵を取り出して手錠を外した。
「ごめんね、痛かった?」
手首を擦る俺を見て真理菜は心配そうに聞いた。そう思うなら最初から付けるな。
それから真理菜は足を縛る縄を外すのに取り掛かった。
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