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その後、俺は部屋から真理菜を追い出し、着替えやら何やらの準備を済ませ、部屋を後にした。
「行くぞ。」
リビングにいた真理菜に声を掛けた。先に玄関にいるかと思っていたんだがな。
「えっ、朝ご飯食べないの?折角美味しくできたのになぁ。」
見てみると、テーブルの上には、サラダにベーコンエッグ、ご飯といった和と洋が混ざったようなメニューが並んでいた。
まぁ、確かに美味しそうではあるが、そんなことは問題じゃない。今は時間がないんだ。
「……食ってたら遅刻する。」
ただでさえ俺の遅刻回数は多い。これ以上は遅刻できんだろうという意識がようやく出てきたのだが、目をうるうるさせて『私の手作り料理を食べてほしいんだけど?』と言いたそうにして目で訴えている真理菜には俺の今の心情を理解するなどできていなかった。
「……仕方ないな。」
真理菜がこういう風になったら俺が折れる他に選択肢はない。とにかく早くしないと、と真理菜の手作り料理を急いで食べた。
すると、真理菜の表情は一気に明るくなった。
「ふふん♪どぉ?美味しい?」
「……まぁまぁ。」
口ではそう言ったが、実際はなかなかに美味しい。下手すりゃ店に並んでもいいレベルじゃないか?と一瞬だけ思った。だが、そんなことを言うと調子に乗りそうだから言わない。乗られて困るのはむしろ俺だからだ。
「そう。もっと頑張んなきゃ!」
なんやかんやで食べ終えたが時間はまずいことになっていた。いつもは寝坊とかで遅刻しかけるが、今回は真理菜が悪い。そう悪態を心の中でついた。
「ほら、さっさと行くぞ。」
ようやく家を出れる、そう思ったが、真理菜はふと俺の手を掴んだ。
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