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「加藤!お前また遅刻かっ!?」
教室に入って早々、担任から発せられた一言はそれだった。
いかにも体育教師な見た目の担任(実際教えてる教科は数学)の怒鳴り声はHR中の静かな学校全体に響き渡ったに違いない。
「罰として放課後反省文だっ!」
それだけ言って担任は俺に席へ座れと促し、HRの続きを始めた。
今日は特別何もないようだ。しかしそろそろ我が校夏の大イベントにして三大行事の一つ、体育祭が近づいているため、昼休みや放課後に特訓をするらしい。担任は数学教師だが見た目は体育教師だからなのか、体育祭はいつもより全力になる。正直鬱陶しい。
俺は反省文だから放課後の特訓は出れない。そこだけ少し得した気分だ。
……俺だけだろうな、こんなに体育祭にやる気がないのは。
この学校の体育祭は面白い、と中学の時から噂にはなっていた。確かに内容は凝ってるし、皆盛り上がっている。
盛り上がらないのは唯一俺だけだろう。断言できる。
他のやる気無さそうにしてる奴もなんやかんやで本番はなかなか楽しんでいたりするからな。
俺が楽しめない原因はたった一つ、体育祭自体じゃなく俺の過去にあるのだが、語るようなことじゃないし、何より語りたくない。頭を過るのですら許したくない。そんな過去。
「よっ、優介!相変わらずやる気無さそうな顔してんな?」
不意に隣から明るい男の声がした。
声を掛けてきたのはクラスの友人の一人にして小学校からの友達で、茶髪で乱れた制服の着方をした今時の高校生を絵に描いたような格好の男、内村圭太だった。
「悪いか?」
圭太の台詞にぶっきらぼうに答えた。
「んー、良いか悪いかでいったら悪いだろうな。」
こいつは俺とは違い表情豊かに話す。こいつは俺とは違い体育祭を一番に楽しんでいる奴と言って過言じゃない。
何が言いたいかと言われれば、俺と奴は正反対な性格をしてるってこと。
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