第一章『傘』

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中学校生活が始まって 一週間ちょっとが経った。 あの数学の先生がウザいとか 何組の女子が超可愛いとか 話題もそんな くだらない内容に なってきた時だった。 いつものように クラスに向かうと 「キモいんだよ!」 自分のクラスから 叫び声が聞こえた。 何事かとビックリして 慌ててクラスのドアをあける。 そこに見えた光景は… 「おー龍太郎!」 いつも一緒にいる グループの一人が クラスの中心的な奴に 蹴飛ばされていた。 「そいつさ、小学生の時 いじめられてたんだって! そんなやつが 俺たちのグループに 入ってくんなっつーの!」 …いじめだ。 まさか俺のクラスで いじめが始まるなんて 考えもしなかった。 俺、いじめとか 好きじゃないんだよな… だるいし、 空気悪くなるし、 先生絡むし、 最悪親も絡むし、 誰もいい思いしないし…。 ただいじめられてるヤツも 痛そうだったし 苦しそうだったし 「ちょっと やりすぎじゃね? 痛がってるし… やめてやれよ」 俺の言葉で、皆笑って 丸くおさまればいいなぁ なんて気持ちだった。 「…あ?」 まさかその言葉ひとつで ターゲットが俺になるなんて 思いもしなかった。 いつも移動教室の時は 男子グループで 移動してたのに 休み時間は窓側の席に 皆で集まって 話してたのに いつの間にか 俺の居場所はなくなっていて… ふざけんな、 ただいじめ止めただけじゃん。 それだけで 仲間はずれなの? つまんねぇことするよな… いいよ、そんなことで 俺のことはぶくんなら そんなの友達じゃねぇし。 皆子供じゃん。バカ野郎… 教室移動も、休み時間も 一人でいい…。 仲間外れでもいい! 最初はそう強がってた。 でも、 「おい、龍太郎 ちょっとこいよー」 ただの仲間はずれが 殴る蹴るの いじめに変わるなんて 考えもしなかった。
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