第一章『傘』

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殴る蹴る、の いじめが始まって 二日ぐらいが経った。 授業が終わって いつも通り早く帰ろうと 先生の「さようなら」の声が 聞こえた瞬間、 荷物を抱え込んで 廊下にとびたした。 「りゅーちゃーん!」 でも今日は違った。 吐き気を覚える声がした。 最悪。 何人かのクラスメイトに 腕を引っ張られて 渡り廊下まで連れてこられた。 この時、下手に抵抗したら かなり痛いことをされる… そう学習してしまった 俺の脳みそ。 何もできない自分が 情けなかった。 悔しかった。 そんなに痛いことが嫌いか 俺の身体は… 男のくせに情けないけど やっぱ痛いのは正直、苦手。 「龍ちゃん なに考えてるの?ん?」 そう髪を引っ張られて クラスメイトに 笑みを向けられた。 うわ、キモ。 その男を睨んだ瞬間、 軽くお腹に蹴りを 入れられる。 「……っ!」 いきなり お腹はないだろ、 軽くでも痛すぎる。 下手したら死ぬぞ、バカ。 あぁ嫌だなぁ これからもっと痛いこと されるのかな 俺、なんにもしてないのに。 正しいことしただけなのに 酷すぎる。 そんなに皆と あわせることが 大切なわけ? あの時俺も アイツをいじめていたら こんなことに ならなかったわけ? そんなの… バカみたいだろ。 コイツら、 ただの弱虫の集まりじゃん
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