第一章『傘』

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「俺がきたから さっきまでいた奴ら 逃げたけど…あれ友達?」 …え? 「蹴られてたみたいけど 平気だった?」 その茶髪の人の言葉で ハッと気づいた。 さっきまで 俺が、いじめられてるの 見られてた…? 嘘だ、嘘 どうしよう、どうしよう どうしよう、どうしよう 嫌だ 『コイツ、 いじめられてんのかよ』 って思われた? 嫌われた? まだ名前も知らないのに? 嫌われた? 憧れの かっこいい、この人に? 「あっあいつら友達! さっきまでふざけて 殴ったり蹴ったりして 遊んでたんだけど…ははっ」 とっさに出た嘘だった。 いじめられてるの 知られたくなかった。 嫌われたくなかった。 「そっか 悪いな、邪魔しちゃって」 「いやっ!別に…」 ごまかせた。よかった。 気付かれなかった。 そうだよ、俺は いじめられてないんだよ… 正しいことしたのに 皆が素直じゃないんだよ! だから助けなんかいらない 「あっ…」 「ん?」 「いや、なんでもないっ」 嘘、嘘! 助けて! 本当はいじめられてるんだ! そう… 一瞬声になりそうだった。 何でかわかんないけど、 一瞬。一瞬だけ…。 「ん、じゃあ 傘…ありがとうな。」 嫌、そんなこと 絶対に言えない。 この人にはバレたくない…
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