第一章『傘』

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「あっ!あ!あのっ!」 背を向けて 帰ろうとしていた 男の人が、振り向いた。 そうだった! 聞かなきゃ! 「あのっ 名前っ、名前…」 名前、聞かなきゃ! 憧れの人の、なまえ! 「あー俺?高木雄也。 たかぎじゃなくて たかき、ね」 間違えんなよ?って そう微笑んだ高木雄也くんは すっごくすっごく かっこよかった…。 ずっと見た目通り クールなのかと 思ってたけど… そんなことないの、かな。 あんな風に…笑うんだ。 「えっと…高木くん!」 「くんは、いらないよ」 「じゃあ、高木!」 「うん。 じゃあな、龍太郎」 りゅうたろう! 俺のこと、 呼び捨てにしてくれた! 大好きなアイドルに 名前を呼ばれたような 感覚だった。 しかも呼び捨ての 許可までもらった! 忘れないように しっかり覚えておかなきゃ。 高木雄也、高木雄也… あ、そういえばこの名前 初めて聞いた感じが しない、かも。 「高木雄也…」 もしかして どこかで聞いた? 「高木雄也、たかきゆうや」 たかき…ゆう、や…?
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