第一章『傘』

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俺の隣に現れた スラッとした男の人。 思わず俺は、 その男の人に 目を奪われた。 茶色い髪をしていて、 シャープな目をしていて、 スラッとしたスタイルで… 全部全部 俺が持っていないもので…。 目が、離せない…。 心臓がバクバクなっていて。 傘を持っている手が 震えるぐらい…。 「…かっこ、い」 無意識に出た言葉だった。 何も考えないで ただただかっこいって 思った。 俺がその男の人を じいっと見ているから そりゃ目が合うわけで。 バチッと音がするぐらい 目があった。 慌てて俺が目をそらすと 男の人は外を見ながら ため息をついた。 あ、もしかして 傘…ないのかな。 そうだよ、 天気予報見てなかったら 朝あんなに晴れていたんだから 傘…忘れるよな。 あの男の人の せっかく決まってる髪型とか 新しい制服とか びしょ濡れになっちゃ 嫌だろうな…。 「あ、のっ!」 無意識っていうのは怖い。 「これ、使ってください!」 気が付いたら俺は その男の人に傘を 差し出していた。 「え?」 また目があった。 かっこいい、かっこいい… 心臓がばくばく言ってる。 「コレ、俺使っちゃ マズイでしょ?」 その男の人は 結構低い声で…。 心臓の奥まで 侵入してくる… ますます心臓が おかしくなりそう。 「いいですっ 俺、大丈夫だから…っ」 たまらず俺は 男の人に傘を押し付けると 大雨の中 俺は走って家に向かった。
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