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緩い山道を上る俺たち一行。
出発から30分は経った頃だろう。
「しかし、その農村部って歩きだと結構かかるんだろ。毎度毎度言うようだけど、お前の転送術でこうパパっ!と、いこうぜ。」
確かに、アールマティが使う転送術でならすぐにでも着けそうだ。
「なら、毎度毎度言い返すが、私はギルドを出てから戻るまでがクエストだと思っている。それを転送術で短縮するなど無粋だろう。」
そんな小学生の遠足みたいな、と言いたくなるが、
「それに私は、こうやってお前達と一緒にいる時間がとても楽しいんだ。」
そう言って振り向くアールマティの笑顔を見ると、
「お、おぅ」
俺も、ラハブも何も言えない訳で、
「ちょっと、待って、よぅ。」
体力不足なんだろう、千鳥足で歩くサラお嬢様のために休憩を入れる時間を楽しもうとするのです。
肩で息をするサラに水を差し出すとまるで、砂漠に居たかの様にその喉をならした。
「しかしまぁ、体力無さすぎだろ。まだ山を越えてもいないんだぞ。」
ラハブが呆れるのも無理はない。目的地までは、今いる山とあともう一つの山を越えなくちゃならないから、今はまだまだ序盤なのだ。
でもここは、幼馴染みとしてフォローのひとつでもいれときますか。
「まあまあ、俺達は明日、明後日と学校休みだし、ラハブ達も用事とかないんだろ?」
当たり前だ、と胸を張るこの風来坊が貴族の出とは到底思えないな。
「皆ごめんね、迷惑かけちゃって。この重いローブ脱げればいいんだけど。」
あはは、と笑いながらサラは夕日に照らされて赤みを増した頭をかいた。
「規律なら仕方がないだろう、緑色のラインと赤玉の首飾りは学位三位の証明なんだろ?」
サラから受け取った水を飲みながらアールマティはサラの体をペタペタと撫で回す。
画になるな。
「付け足すと、学位をとったものがローブの着用を許されて、その中で色分けされているんだよ。」
あ、俺は勿論学位なしですよ。はい。
あぁ、皆のなんとも言えないような視線が突き刺さる。
そんな目で俺を見ないで。
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