第一節

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目的地ではないものの、日が暮れてきたため山あいの村で夜を明かすことになった。 ギルド組合、組合員の証である手帳を村長に見せると快く泊まらせてくれた。なんでも極稀ながらこちらにもゴブリンは顔を出すため、その討伐隊である俺達一行は勇者のように迎え入れられた。 「今日は早めに寝て、明日は日の出と共に出発したいな。」 夕飯時、山菜のおひたしを口に運びながらアールマティとラハブが明日の予定を組み立てていく。 「それは、いくらなんでも早すぎねぇか?もう少しゆっくりしていってもいいだろ。」 「村の人達の話だと、次の山は起伏が激しいそうだ。それにこちらの村にもゴブリンが来るなら、鉢合わせになる可能性も否めない。そんなことに時間を浪費した挙げ句山で野宿という展開は願い下げだろう?」 確かに。アールマティの言うことももっともなので、夕飯をご馳走になってすぐ、俺達は床についた。 明くる日、起きてみると隣で寝ていたラハブの姿がない。 外に出ると、やや肌寒い空気の中ラハブは一人空を見上げていた。 「おはよ、寝起きがいいなラハブは。 どうかしたのか?難しい顔して。」 「いや、なんでもない。ただなんとなく、そうなんとなく胸糞悪いんだ。」 そう言ってラハブは、厚い雲が立ち込める空を睨んでいた。
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