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ラハブは、昨日と打って変わって沈黙を貫き時たま舌打ちと共に道端の小石を蹴り歩く。
なんてことはなく。
道ながら朝食のおにぎりを食べるラハブは、いつも通りヘラヘラと山の空気を楽しんでいた。
その顔に今朝の不穏な空気がないことで、俺も少し安心する。
「ごめんね、朝から手間かけさせちゃって。」
俺のすぐ後ろからサラが謝ってくる。
「気にすんなよ、この山道は俺でも能力使わなきゃちょっと厳しいんだから。」
うん。と言ったサラの手に力が入ったのがわかった。
「でも、やっぱり」
サラの鼓動が少しばかり早まるのを感じる。
「おんぶは恥ずかしいな。」
そう、改めて言われるとこちらも恥ずかしいのだが。
「仕方ないだろう、この中で一番力があるのがカルマなのだから。
私たちでも流石に人一人をおぶって歩くことは厳しいものがある。」
と言う、アールマティは汗ひとつかいてないのが不思議だ。
「それに、カルマも悪い気はしないだろ?どうよ、女の子をおぶった感想は。」
「柔らかくてとても気持ち良いです。」
しまった。ラハブの言葉に即答してしまった。
ローブから覗くサラの白い腕が一瞬反応し、
次第に赤く染まって、
そのまま俺の首を絞めるんですね、わかります。
山頂についたところで、休憩を入れることになった。あれからサラは事あるごとに俺を変態扱いしたのは内緒だ。
山頂にはここを通る人のためにか、簡易的なベンチやテーブルが置かれていて各々自由に休むことにした。
「まだ、胸糞の悪さ取れてないのか。」
ああ、と答えたラハブは空を睨みながら続けた。
休憩に入ってからラハブは一人切り立った崖の上で今朝と同じ顔をしていた。
「なんつうか、嫌な気配というか、嫌な空気が体中を蛇みたいにまとわりついてるんだ。
俺と、アールマティがいる以上大抵のことは問題ないと思うが、気を付けろよ。」
いつになく慎重なラハブの言葉に促され、自分の能力の調子を今一度確かめた。
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