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ギルドのざわめきは、今入ってきた二人の容姿、
片方は長い金髪をなびかせ、一枚の衣を纏うまさに天使と形容するに値する女性。
片方は黒い短髪に黒いサングラス、それにピアスやネックレス、腕輪、両手には黒いグローブと、どこのパンクロッカーだと突っ込みたくなるような風貌の男。
その二人の対比が極端だったからでは、
勿論ない。
「初めて見たぜ、天使の貴族って奴。」
「あれが悪魔の風来坊ってやつか、確かにスゴい奴だな。歌舞伎者って言うのか?
でも、良いとこの坊っちゃんなんだろ?」
その通り。野次が語るように、二人は本当はギルドに顔を出すような身分じゃないから、そりゃ周りもざわつくだろうな。
俺とサラは、そんな二人に近づいて手を振る。
「よう、久し振り」
周りがまたざわめくのに、思わず苦笑が漏れる。
「最近なんで連絡くれなかったんだよ。」
テーブル席につき、紫色の何かを飲みながら風来坊の方、ラハブは不満の目を向けてくる。
「最近はミルク配達でなんとかなったてたから、さ。」
「なら、今はなんとかならなくなったのか?」
金髪美人の方、アールマティが表情を変えることなく尋ねてくる。
いつも真っ直ぐ目を見つめてくるから、少しだけ身じろぎしてしまう。
「いやぁ、やっぱり錬金術が使えないと扱いにくいって言われてしまいまして、」
「クビになったのか。」
アールマティは少しだけ目を見開いて俺の目を見てくる。髪と同じ色をしたその目はとても綺麗で思わず、照れ笑いが出てしまう。
「かたっくるしいなぁお前ら人間は、魔界に来いよ、歓迎するぜ。」
「何いってんの、その日暮らしの癖に。」
サラの突っ込みに、うへぇと八重歯を覗かせながらラハブはまた紫色の何かを飲む。
ほんと、なんだろあれ。
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