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薄暗い曇り空が広がっている。あの日以来太陽を拝んでない。
そんな事を考えながら瓦礫と化した町をゆっくりと歩き進んでいった。
時々異様な鳴き声が町に響く。
その度に背筋が凍りつき立ち止まって、姿勢を低くし周囲を警戒する。
警戒を解き前を向くと、半壊したビルが建っており入口が開いていた。
手にもった銃を構えながらビルの中へと入っていく。
ビルの中は思ったよりも損傷は少ないようで、内部の安全を確認すると構えを解いた。
少し安心すると足が酷く重いことに気が付いた。
もう何時間歩き続けたか分からないな、そう考えゆっくりと壁を背に座り込む。
目的地がある訳でもないのにこの後も歩き続けるのかと考えたが、何か他の答えが出るわけもなくビルの奥へと歩きだした。
すると、子供の声が聞こえてきた。
…あさん………おかあ……おかあさん……お母さん
声の元に近付く程に鮮明に声が聞こえてくる。すると少し開けた場所に出た。
ビルの中庭だったのだろう、元は花壇だったであろう物が並んでいた。
その奥に女の子が女性に向かって泣きながら声をかけている。
その娘の母であろう女性は足が瓦礫に挟まっていて花壇を背もたれにしてなんとか座っていた状態だった。
そして娘であろう女の子を宥めようとしているのか、頭を撫で続けている。だが遠目からでも母親がかなり衰弱していることが見て取れた。
そして、親子を助けようと足を踏み出した瞬間。
ガラッ…
突然の事に足が止まった。音のした方向を見ると、異様な生物が立っていた。
見た目は二足歩行だが、腕は四本ありすべてが鎌のような形をしている、頭は海老のように長く触手の様なものが生えており、そこから覗く歯が異様にまがまがしい。
そして、その生き物はゆっくりと親子の方へと向かっていく。
すると、母親が生命体に気付き我が子を庇うように抱きしめた。
その瞬間、過去の出来事がフラッシュバックの用に頭を駆け巡った。
ーーー逃げな…カズヤは生きて…ーーー
次の瞬間には、銃を構えながら走っていた。
「ウオオオオオォォォォォォォォ」
雄叫びをあげながら引き金を引いた。
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