彼女の始まり

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海の底の深海の世界 セピアグレーなのか セピアブルーなのか 見分けも付かない程の暗い世界 そんな深海の世界に 硝子ケースのような防圧壁に、すっぽりと入った都市がポツンとあった。 そこから延びる硝子パイプのような通路 海底都市から出るには、その通路を通り、通路の終わりからクジラタクシーに乗らなくては、深海の恐ろしい程の水圧に耐えられない。 無防備に外に出れば、忽ちペシャンコになってしまうだろう。 これでは 人魚たちを守る都市だか閉じ込める砦だか判らない。 そんな狭い海底都市。 人魚姫の悲劇から より人間を避けるようになった人魚たち。 明るく美しい浅瀬での、楽園のような生活を捨て、ひっそりと深海に暮らすようになった。 そんな暗い深海に人魚たちが慣れるくらい時が経ち 姫の悲劇は伝説となって、物語だけの世界の話だと思う人魚が多くなった。 人魚たちは、姫の悲劇で心を痛めた善い魔女らに積極的に援けられ、浅瀬の生活の快適さとはまでいかなくとも、それに近い生活に満足し平和に暮らしていた。 *
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