彼女の始まり

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女の子は恋の話や噂、それから占いが大好き! それらが全部詰まった会場を、乙女たちがとても楽しみにお行儀よく並んでいた。 海底都市の中でも一際大きな建物。 月に一度、人魚たちの祝福を祈りにやってくる-魔女姫-。 その建物の中で彼女が一日だけ、恋する乙女を占って恋愛成就のアドバイスをくれる。 海の生き物は、空に浮かぶ月にバイオリズムが左右される。 人魚も例外ではなくて。 でも、海底深くに移住した人魚たち。 月の影響を受けにくく、ゆっくりとゆっくりと、新しい生命の誕生が減少していった。 一人の悪い魔女の所為で、絶滅の危機に立たされた人魚 善い魔女たちは罪悪感に駆られて保護に乗り出した。 魔法の力で海底都市を作り、その都市に満月の頃に訪問することで、人魚たちの繁殖を促す。 あとは、長老たちに変わりはないか訊ね、平和な海底都市の維持を保つことに神経を注げば任務完了。 都市滞在中に魔女はやりたいことを比較的自由に出来た。 魔女姫と呼ばれる魔女は、人魚研究の一人者で魔力も相当なもの。 千年に一度の逸材と魔女たちの中でも一目置かれた存在。 生まれながらの盲目で、そのためか神秘的で そのためか妬まれたことがない。 いや、魔女姫と呼ばれ、孤独になり勝ちなのは妬みの所為か… 人魚も人魚で神のように崇めるので、友達と言えるのはガキ大将のような元気な少女の人魚だけ。 人魚保護の一環で、魔女姫は水晶と水鏡を前に得意な占いをしていた。 いかに カップルを誕生させ、子孫を残すまでに至るか。 恋心は多くても、片思いで満足してしまう乙女の人魚と 優しいだけで、なよなよフラフラ優柔不断な奥手な青年人魚。 魔女姫は乙女の人魚の背中を押して、 -押し倒してでも彼のハートを射止めて来い!-と、…少々無責任気味に応援する。 だってそれが仕事だから。 だって今夜は満月で、空の上で光っているから。 そんな風に魔女姫に操作されているとは知らず、 -魔女姫さまの占いって、よく当たるのよね。-とか -あの子とあの人、魔女姫さまのおかげでカップルになったんだって- なんて、乙女たちは噂しながらドキドキして占いが始まるのを待っていた。 その列の一番先の、小さな存在を無視しながら… *
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