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おしとやかでおとなしい人魚
では、初めからそうかと言えばそれは間違い。
大人になれば狭い海底都市でも、小さな子供は広い世界。
好奇心旺盛で、乾いた地面が水をぐんぐん吸うように
悪戯を重ねながら、ドンドンと知識や常識を吸収する。
ただ
乾いた地面も水を吸い続ければ、やがて一杯になって水が溢れてしまう。
子供たちは広いと思ってた海底都市の壁を知り、身に着けた常識が諦めを叩きつけてくる。
人魚の男性陣が少々頼りないのは、挫折から立ち直れずにそのまま成長したからなのかもしれない。
物語の主人公の人魚の少女は、その乾いた地面が広く深く、吸収力も優れていて
だから未だに、知識を吸収しようと活発で居れるのかも知れない。
何食わぬ顔で、開場間近の占い会場までやって来たその少女。
先頭に並んでいた子供と、ハイタッチしながら交代した。
-あの子ずるいわ。
私たちはみんな長時間並んでいたのに、何交代もして楽してる。
-シッ!
あの子に聞こえるわ?
あの子よ。あの子。
何時までもお子様で悪戯ばかりの困った子。
あんな子とお付き合いしたら、乱暴者に数えられてしまうわ?近寄らないのが一番よ
-ねえあの子のあだ名知ってる?
『必殺暴れん坊スペシャル』なんて、子供たちから呼ばれているの。恥ずかしいわね…
噂が大好きな女の子たち。
彼女から離れた乙女たちが、ヒソヒソと囁き始めた。
「なあ~にかっ!文句有るの!
なら、はっきり言いなさいよ!
それにね。
ずるいんじゃなくて、ココが違うの!
時間を効率よく使っただけ。
あんたたちも次からそうすればいいじゃないの。
ふにゃふにゃネチネチべた付いて気持ち悪いったらないわ!
ふんっ!」
必殺暴れん坊スペシャルと変なあだ名がついた彼女の、強気な発言に泣き出してしまう女の子もいた。
彼女はふんぞり返って知らんふり。
そうこうしている間に、占いの開場の扉が開いた。
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