彼女の始まり

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少し考える素振りだった魔女姫が、徐(オモムロ)に口を開いた。 「そう、ですわね。 貴女はニンゲンのことを、よくご存知ではないのですものね。 それを知るのも良いことかもしれませんわ? ここでは人目を憚(ハバカ)り詳しくお話出来ませんが、ニンゲンを知ることが出来る伝手(ツテ)が御座いますの。 では、まず、お覚悟がお有りなら、わたくしの屋敷においでなさい。 よいですか? わたくしの屋敷に行くというのは、もう二度とここへは戻っては来れませんの。 本当にそのお覚悟がお有りなら、わたくしが責任を持って貴女の望みに近付けますわ? その結果は、貴女次第で変わります。 ただ、二度とここへは帰れないのは変わりません。 よく考えて行動なさい」 「行く! もちろん行くわ! あたし、この海底都市じゃ もう物足りないの。 詰らない一生より、苦労してでも変化がある一生を送りたいの! ちゃんと覚悟もしているの!」 魔女姫が噛み砕いて説明しても、好奇心一杯の少女の頭には軽く流れてしまうだけ。 腹を括ったのは魔女姫の方だった。 「そうですか‥ では、外通路五番の深海魚の養殖場の外れに、わたくしのクジラタクシーを待たせます。 お覚悟がお有りなら、一人で乗って来なさいませ。 わたくしと一緒では、監視付きになりますけど、ここへ戻れる可能性が出来てしまいます。 ですから意思確認ですわ? お一人でクジラタクシーに乗れないようでしたら、この先が思い遣られますもの」 「分かったわ! 最後にみんなの顔を見てから出発する! それくらいはイイでしょう?」 魔女姫が微笑みながら頷くと、やったー!と叫びながら少女は魔女姫にハグをする。   ポッ‥ 「まあ、わたくし、殿方の方が‥」と、毎度のごとくコントが始まる。 少女は上機嫌で、魔女姫に鋭いツッコミを入れた。 *
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