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フランス領の諸島のリゾート
本島と火山が有る島が有名。
珊瑚礁に囲まれ内海は静か。波の音が遠くで聴こえるのが神秘的。
その諸島の中で、観光客が滅多に入らない外れに有る小さな島。
元からの現地人が多く、リゾートなのにホテル以外は閉鎖的なところが有る。
それが俺がこれから行く島。
島と島は、連絡便のセスナが定期的に飛ぶので、ポートの心配は要らない。
あらかじめ用意していたガイドを反芻しながら、操縦桿をゆっくりと倒し着陸態勢に入った。
セスナを降りてポートの従業員を探す。
プリプリと腰というか、尻を振りながらやって来た現地の少女?少年?
白いティアレのレイを俺の首に掛け、ウエルカムキッス……!?ブチュっと重いのをカマサれた。
「ヨウコソ!南ノ楽園二!
オニーサン!」
色黒の美少年がニッコリと片言の英語で迎えてくれた。
…ってか、キスしやがったよな?
睨んだのを無視するように、彼からキンキンに冷えたウエルカムドリンクを渡されて、それを飲む。
さっぱりとして美味かったと言うと、島の特産品で現地語でアナナスジュースだと教えてくれた。
アナナスはパイナップルの現地語だ。
彼の名はヒオナで、現地語で雪を表す。
美少年は女性の身のこなしをするのが、現地での風習なのだと教えてくれた。
美少年と称えられるのが誇らしく、柔らかで流れるような動きを常に意識してるんだとか。
「オニーサン、カッコイイネ!
タイプダヨ!」
…彼の場合、趣味のような気がしてきた。
この仕事に誇りを持っているだとか、ウエルカムキッスは誰にでもするだとか。
とにかくヒオナはお喋りで、チップをズボンのポケットに捻り込んで、やっと仕事をする気になってくれた。
「燃料を満タンに。飲料水は置いて有る?
‥じゃあ、ボトルに詰めたのを出来るだけ積んでくれ。
それから、市場とか人が集まる場所ではなく、小さな‥個人経営のスーパーマーケットみたいなのが有ったら教えてくれ」
ここの公用語のフランス語で話すと、ヒオナはニッコリと笑い、アナナという看板娘が居る店を教えてくれた。
「名前の通りパイナップル娘だよ。
オニーサン浮気ダメネ!」
流暢なフランス語と片言の英語を残し、ヒオナは後から来たセスナを誘導して、降りてきた客にキスをしていた。‥‥‥頬に。
溜め息ひとつ、ガラガラとカートを押してその場から離れた。
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