15人が本棚に入れています
本棚に追加
カランコロンと、カウベルに似たドアのベル。
そいつを開けると、ココナッツの香りが迎えてくれた。
陳列棚が4列の小売店。
奥行きは、まあ有るので品揃えは満足出来そうだ。
キャッシャーの上に散らばる白い花。
店員が花冠でも拵えているらしい。
本島からのラジオ放送が、南国のダンスミュージックを流して雰囲気は良さ気だ。
「イラッシャ…イ‥
うはっ!
ち‥ちょっとオニーサン!
観光客?じゃ、ないわよね!どーしてここに?
うわー素敵!タイプ!カノジョ居る?
私フリーよ!
何が欲しいの?何処に住んでるの?んー‥ここじゃ無いわよね。分かった!隣島?
長く居るの?永住する気?よく居るのよね~ここに来て帰りたくなくなる人!オニーサンもその口?
現地語ってね。その土地に恋人作ると覚えが早いんだって!どう?私!私が教えてあげるわ?」
キャッシャーに居た店員が、来客に気付き身を乗り出した。
俺と目が合った店員の娘。
恐ろしくプロポーションがイイ娘だと思っていたら、突進されて腕を取られしがみ付いてきた。
胸が当たってたじろいでいると、嗜む程度の俺のフランス語力では聞き取れない程のマシンガントーク。
その態度と聞き取れる部分で、どうやら懐かれたんだと判った。
クラリと眩暈がした
人から避けられるのは辛いが
こう大歓迎されるのもキツい‥
「あ~え~っと‥
二週間分位の食料が欲しいんだが‥
パンを自分で焼くのと、コーンスープ。
その材料の粉類を大袋で。
卵と肉。肉は日持ちしそうなのと、ミルク。
それから‥アナナ聞いてる?」
べったりと俺にくっ付く彼女。
彼女がヒオナの言ってたアナナという看板娘だろう。
小麦色の肌に黒い瞳と長い髪。
ニコニコと陽気に笑う姿は、正にパイナップル娘だ。
「うわお!
何で私の名前知ってるの?
あーヒオナね!
オニーサン。ヒオナのタイプそうだもん。
あんなオカマより私のほうがイイでしょ?
もーそんな顔しないで!
分かってるわよお客さん。
お買い物がしたいんでしょ?
でも卵とお肉は置いてないの。
貴方じゃあのお店の人は売ってくれないわ‥
そうだわ!私が買ってきてあげる!だから付き合って?
あーウソよウソ!付き合わなくてもイイから買って来てあげる。
オニーサンは商品選んでてネ!」
言うだけ言って駆け出した彼女。
なんて積極的な娘だろう。
*
最初のコメントを投稿しよう!