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学園『イシス』。
魔術が存在するこの世界、『ヴァルナ』にある有名な魔術学園の一つである。
魔術を学ぶための学校だ。
ジョウシュ・スエードは、そこに通っている学園生徒の一人だ。
今、彼は3限目の授業を終えたところである。
ちなみに、3限目の授業内容は、魔法鉱石について、であった。
魔法鉱石とは、魔力の詰まった鉱石である。
縮めて、魔法石と呼ばれることもある。
ジョウシュは次の授業が移動教室だったので、次の教室に向け、廊下を歩いていた。
一人で、だ。
彼は一人でいる時が多い。
それは彼が醜いなどということではない。
彼の身なりは至って普通である。
問題は、彼の魔力にある。
「やぁ、スエード君じゃないか。」
ジョウシュの前に人が立ちはだかった。
「あ…えと、ソーマ君…だよね。こんにちは。」
ジョウシュは咄嗟(とっさ)に笑みを作り、話かけてきた相手に答えた。
咄嗟に作ったものだから、少し歪んではいるが。
「おい、スエード。凡人の分際でソーマ様の名を口にするなよ。」
「セレンテ様と呼べ。」
ソーマの取り巻きであるアーウィン・ラークと、ヴァセリン・ワーウィックだ。
「あ…ごめん。」
「べつに構わないよ、スエード君。」
自分より前に出た取り巻きを制止し、ジョウシュに詰め寄る。
「それより、君、また昇格試験落ちたそうだね。」
ドクン、とジョウシュの鼓動が鳴った。
「うん…。よく知ってるね。」
「聞いたんだ。理事長にね。
僕には伝わるだろ?生徒に係わることは全てね。」
「あー…うん。」
「また受けるのかい?」
「う、うん…。機会があれば…。」
「どうせ落ちるさ。」
「お前は一生Eランクのままだ。
何故ならお前には…魔力が無いからな。」
魔力が無い。
それがいつもジョウシュが一人でいる理由の一つだ。
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