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教室に着けば、もうすでに生徒達が集まっていた。
4限目は薬草学だ。
薬草について学び、どれがどのような効果があるのかを知る。
この時間は自由席なので、ジョウシュは一番奥の窓際の席に座った。
薬草学は嫌いではない。
調合の実習は楽しいと思える。
窓の外を眺めた。
肘を付き、ぼんやりと外を見る。
外は豪華絢爛な中庭が広がっていた。
広い域に、噴水や生徒が座ることの出来るベンチ、そして色とりどりの花達。
その中に、ジョウシュは似合わない色を見つけた。
黒色だ。
目が悪いので眼鏡をかけているが、それでもはっきりと確認出来ないので、目を凝らす。
あれは、人だ。
黒い衣服に身を包み、立っている長身の男。
彼は、自分を見ている…?
彼と目が合ったと同時に、始業のベルが鳴った。
ジョウシュは慌てて黒板に目を向けた。
生徒達は一斉に席につき、教師が教卓についた。
起立、礼、着席と一通りの動作を終え、もう一度窓を見ると、男の姿はすでに無かった。
(見間違い…だったかな…。)
ジョウシュはため息をつき、黒板に目を向けた。
教師が授業を始める。
今回はオウランという薬草についての話だが、ジョウシュは肘を付き、その話を聞き流していた。
先程の男は誰だったのだろう。
見間違いかと思ったものの、やはり気になる。
今思えば、何だか哀愁が漂っていた気さえする。
ジョウシュは再びため息をついた。
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