その1 『スキ』

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「おねぇーちゃーん。スキって何ぃー」 「扇風機越しにそういうの聞かないで。暑苦しくなるから」 眼鏡をかけた姉が、 涼しい顔をしてそう言い、 肩までしかない短い黒髪を耳にかけた。 私は膨れっ面を扇風機にさらし、 頭の上で造ったお団子を外して 茶色におびた髪の毛を下ろす。 「だって、分からないんだもん」 「まだ前の彼氏引きずってんの?」 「べっつにぃー。だってアイツ」 私がフッたもん。 そう言う前に畳に寝転んで、 天井を瞬きもせずに見つめた。 あー…熱い。 溶けちゃいそうなぐらい熱い。 おばあちゃん家はエアコンが無いから、 本当に熱中症になってしまいそうだ。
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