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「お名前を伺っても宜しいですか?」
相手の言葉遣いに影響されてかどうかはわからないが、橋本の言葉遣いも自然と変化していく。
「そうであった。わしの名は御宿勘兵衛政友である」
聞いたことはないが、古めかしい名を口にした男は警戒の念を僅かに緩めた。
「ところでここは何処なのであろう」
「ここは神奈川県の小田原市の、久野駐在所です」
御宿政友が顔をしかめた。
それもそのはず。彼が何年前かの人間かはわからないが、身に纏った鎧から考えられる時代には存在しない言葉を扱っているからだ。
橋本は知らずの内に御宿政友と名乗るこの男の事を「本物」だと感じていた。
「小田原・・・・相模ではないのか?」
今度はこちらが顔をしかめた。
学生時代、日本史を疎かにしていたことを悔やむ。
政友が現代のことを知らない分だけ、橋本は彼の時代のことを知らないだろう。
しかし彼と自分との間に、共通する単語が存在することに橋本は気づいた。
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