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政友に着替えてもらうと、なんとも言えない違和感が彼から滲み出ていた。
数多の戦場をくぐり抜けてきた政友の風貌と、20歳半ばの橋本のセンスで選んだ服はそう上手く合致することはない。
政友も不満そうに自分の体を眺めているが、こればかりはどうしようもなかった。
「あと、この時代の通貨も、両ではありません」
橋本が財布から3000円を抜く。
「この時代は円という通貨が使われています。これを渡しておきます」
政友には昨日既に現代と戦国時代との数字の表記方法の違いに付いて話しておいたので、恐らく大丈夫だろう。
「色々世話をかけるな」
政友の謝礼に橋本は笑みで返した。政友が扉を開ける。
昨日とはうって変わって眩いほどの晴天となっていた。
足を一歩外へ出すと、陽光が風に乗って体を撫でる。
政友は体を完全に外へ出すと、橋本に向かって頭を下げた。
「ではまた会おう。橋本殿」
橋本も頭を下げる。
遠のく足音が聞こえ次に顔を上げたときには、彼は姿を消していた。
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