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小田原高等学校城を占拠していた松田康長は、幽霊でも見たかのように動揺していた。
いや、彼にはそれが霊的なもの以外には見えなかったのである。
「あれはなんだ!!」
康長の怒鳴り声を聞いた兵が狼狽える。
しかし誰が口を開くわけでもなく、皆康長のように怯えていた。
康長と数人の兵の眼が映していたのは、地上の門付近に4つほど灯された明かりである。
その明かりは篝火という程燃え盛っておらず、そもそも火よりも紅い。
まさに地獄の炎、もしくは人魂のようであった。
更には時間が経つにつれ、その炎は甲高い音と共に次から次へと増えていく。
その光景が、この場所の奇怪さと相まってより一層恐ろしく感じられる。
既に氏康への伝令は放っているが、本隊の到着まで自分の精神が持つのかどうかすらわからない。
康長は平常を保とうと、目を窓から室内へ向けた。
この城について分析をしようと考えたのである。
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