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事の発端は、2010年7月5日、神奈川県小田原市でのことである。
小田原駅から南にある、かつて後北条氏が拠点としていた小田原城で、奇妙な人影を見たという噂が流れた。
小田原城は今では観光地として様々な観光客が訪れる場所であり、最近の戦国ブームの煽りを受けて歴女と称される女性たちが戦国武将をモチーフにしたキャラクターのコスプレをして所縁の場所を訪れるといった奇妙な行動が話題となったが、どうやらそういう類の人物でもないらしい。
その噂によると、その人影は擦り切れた鎧を纏い、腰には小太刀を下げ、敗残兵のようによろよろと物陰に消えるのである。
一時期この噂が話題になり、小田原城へ足を運ぶ観光客が日に日に増えていった。
さらに同じ頃、山梨県甲府市にある武田信玄公墓付近で、深夜に同じような甲冑姿の人影を見たという噂も現れる。
誰もが初めは小田原城の件に便乗した虚言だと笑っていたのだが、いつの間にやら似たような噂が全国各地から聞こえてきた。
この噂が偽りではないと人々が気づくのは、2010年10月のことである。
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