第一章 出会い

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その日は雨が降っていた。 秋半ばの涼しさは雨音と共に流れ落ち、湿った空気が駐在所の中を支配している。 夕刻を知らせる赤い照明は雲に隠れているものの、壁の掛け時計を見ると5時と6時の間を針が忙しなく動き、夕刻であることを示していた。 しかし駐在所のガラス張りの扉の向こうの景色に、夕刻特有の、仕事を終えた人々が家へと急ぐような光景は見られない。 湿気の強い雨がそれとなく落ちてきているだけである。 昨日までとは違う光景に違和感を覚えていると、ガラスの枠の横から初老の男が顔を出した。 「駐在さん!!橋本さん!!!」 その男は扉を開けると同時に、駐在所の中にいた男の名を呼んだ。 「どうかしましたか?」 橋本と呼ばれた男が立ち上がると、初老の男はすかさず橋本の腕を掴み、橋本がレインコートを着る暇すら与えずに外へ引きずり出す。 「早く来てください!!大変なんです」
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