第一章 出会い

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人の群れが円になって囲んでいるその中央に、男が立っている。 その男の姿は濃い雨のせいで良く見えないものの、男が纏っているそれが衣服ではないことだけはすぐに理解できた。 雨を弾く鈍い光沢は、陽光のない雨空の下でもその存在を主張している。 光沢に包まれた男は群衆の前へ出た橋本に気づき、ゆらりとこちらに顔を向けた。 顔の様子は良く見えないが、ひどくやつれていることは感じ取れる。 「・・・・・は・・・・・・」 男が声を発した。 その声は砂煙のようにかすれてはいるが、砂嵐のような苛立ちを潜めている。 「ここは・・・どこじゃ・・・・・」 今度は芯の通った声を低く鳴らす。 かすれてはいるが、はっきりと聞き取れた。 「ここは神奈川の小田原市ですが・・・」 橋本がその見覚えのある光沢に警戒しながらゆっくりと近づく。 「小田原・・・・・小田原・・・・・・・・」 男がうわ言のように言葉を繰り返すたび、足が立つべき地面を見失う。 やがて体が大きく揺れると、雨に埋もれたアスファルトに倒れた。
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