44人が本棚に入れています
本棚に追加
アーティスティックなオブジェ。
プールとサンシェードハウス。
くるり見る。
かつかつと足音。
リビングの方から?
見れば、女性が一人。
リビングからこのテラスに歩いて来ている。
思わず息が止まった。
銀色の髪。
ストレートの肩を越す長さで、陽の光にきらきら冷たく輝いている。
赤い瞳。
白い肌にネイビーブルーのシンプルなワンピース。
女神?
微笑んで俺のすぐ目の前に、来た。
「大丈夫かしら?背中、見せて?」
するりと俺の背後へ。
ごく自然に、シャツを捲り上げる。
ひんやりとする指先が、そこに触れる。
全身に熱波がうねる。
「赤くなってるわ。痛む?」
「だ!大丈夫です!」
慌ててシャツを引っ張って下げる。
「ふふ。お給料は減らさないよう、言っておくわね」
「……あの?」
「はやく着き過ぎたわ」
小首をかしげる女神。
さらり。
髪が揺らぐ音が、聞こえた。
心臓がばくばくしてるぞ。
俺。
ああ、そっか。
今日到着のオーナー一家の?
こんなに綺麗な人、初めて見た。
いや。
テレビや映画やグラビアや、そんな平面世界では見たことあるけど、目の前に3Dで?
何歳くらいだろう?
バカミナと同じ性別と思えない。しかも、この人に、俺、さっき触られたよな?
うわ!おかしな反応した?俺?
「お名前は?」
涼やかな風をそよがせる、声。
なんだか、喉が乾く。
「あ、仁、です」
「仁君ね?私はイーリス。それから」
イーリスは、きょろりとあたりを見回し「ペルラ?」
視線を更に遠くにやる。
さっき俺がしたみたいに。
だだっ広い芝生。
オブジェ。
プール。
ぴたりと目を止める。
白い長い指が口元へ。
「あ、危ないわ」囁くような声。
はっとしてプールを見た。
プールサイド、小さな女の子が必死に手を伸ばしてる。
水面に浮かぶ帽子。
あれは本当に危険。
思うより先に足が駆けだす。
走る予感。
浮かぶ映像。
そのままに、ばしゃんと水音がして、女の子がプールに落ちた。
ほとんど同時に、水に飛び込んだ。
シャワーを浴びて、用意してもらった服を着た。
少し大きい。
ちょっと恥ずかしいな。
勧められてソファに腰掛ける。
「仁君、線が細いわね。私のシャツにする?」
「あ、あのいえ。いいです。ありがとうございます。イーリスさん」
「イーリスでいいわ。ほらペルラ、お兄ちゃまにお礼をなさい?」
ペルラは、イーリスの後ろに隠れたまま。
最初のコメントを投稿しよう!