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一体何なんだ、これは。
俺は随分動揺していた。
これでは、まるで――。
「あ、飯田。昨日お前に借りた漫画、返すよ。ありがとう。めっちゃ楽しかった」
ふと神田は思い出したように俺に告げた。
さすがに血の気が引いた。
…何だって?
とりあえず、飯田とは俺のことであるが。
俺が、神田に漫画を貸した?
いつ?
昨日?
何の?
どうして?
俺は、神田を知っていた?
理解できぬまま神田から貸していたという漫画を受け取った。
ああ、確かに、俺はこの巻を持っている。
「飯田?どうした?顔色悪いぞ」
神田は俺の顔を覗き込んだ。俺は恐怖を覚えて、体を引く。
「いや、大丈夫。ちょっと考え事してた…」
「飯田が、考え事!?」
すかさず神田は追求してきた。本当に驚いているみたいだ。
「明日は台風が来るぞ」
周りにいた何人かが笑う。俺は、笑わない。笑えない。
もう来てるよ。
神田という名の台風が。
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