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中学二年生となる霧島悠は同じ夢を良く見た。夢と認識していれば自在に夢の中で動けると言われるが、彼の悪夢には当てはまらない。目を覚まそうと思っても覚醒できず、毎回同じ結末にたどり着く。この恐怖と苦痛と憎悪と後悔と絶望に満ちたこの夢を、彼は今まで何度も何度も見せられているのだ。最初はかなり苦しんだが、今では慣れてきたため、内容を深く考えずに忘れる事を覚えていた。おかげで翌朝不機嫌になる程度に心の消耗を抑えることができるようになった。
そして今夜も件の夢を悠は見ることになった。数年間付き合っているせいか、この夢を見せられる時が解るようになっている。眠りに落ちる直前、頭の中に引き込まれる感覚に襲われるのだ。頭の中にという所と夢の原理を考えれば、この悪夢の原因は悠の心か記憶、または両方にあるのだろう。しかし彼は原因を探ろうとは思わない。なぜならばどうせ辛い思いに決まっているのだから、悪夢に慣れてきた今、何故わざわざ嫌な記憶や思い出を掘り返し、対決しなければいけないのか理解できなかった。
いずれ自然と見なくなるはずだ。そう信じて悠は自身の頭に吸い込まれる感覚に身を任せ、眠りに落ちた。
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