クビキリサマA

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 目覚まし時計に勝利する日など、悠にとっては久しぶりであり快挙といえた。本来ならば清々しい朝になる事間違いなく、その日一日を祝福できる喜ぶべき出来事なのだが、生憎本人にその気がなければ無意味なイベントと化す。そもそも昨夜の夢の結末が原因で、今朝の悠はいつにも増して不機嫌だった。ただでさえ不愉快な夢が、不可解な中断のされ方をしたのだから無理もない。しかし不貞腐れていても仕方がないので時計のアラームを切り、着替えを済ませると階段を降りキッチンへと向かった。  食卓では早々と食事を済ませた父親が新聞を読んでいるだけで、いつもならば居るはずの妹の姿はなかった。 「おはよう。早起きはいいことだな」 「今朝は早いのね。すぐ作っちゃうから、その間に美奈を起こしてきてくれる?」  悠は特別気遣われている態度を取られることを嫌う。悠が不機嫌な時ほど普通に接した方が良いことを家族は知っているため、遠慮することはない。グラスに注いだミルクを飲むと、悠は返事の代わりに溜息をつき、妹の部屋に向かった。  両親の部屋は一階にあり、子供二人の部屋はそれぞれ二階に用意されている。悠の部屋は奥に、美奈の部屋は階段のすぐ前になる。さっき通った時は気づかなかったが、確かにまだ部屋の中にいる気配がある。 「おい、美奈。そろそろ起きた方がいいぞ」  いつもならば悠よりも早く起き親の手伝いをしている美奈だが、今朝に限っては何故か起き出す気配はない。 「……だから言っただろ。夜ふかしは控えろって」  昨夜は遅くまでなにかゴソゴソとしていたのを、悠は壁越しに知っていた。悠が寝る直前になっても起きていた様子があるので、深夜一時過ぎまで起きていたことになる。小学四年生には厳しい時間だ。しかもそれを数日続けているのだから無理はない。 「悠? お母さんに頭痛いから学校休むって伝えといて」  病人のような細い声で返され、不安を感じた悠がノブを握ると鍵が掛けられていた。
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