クビキリサマA

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「美奈。調子が悪いなら鍵開けろよ」 「やだ。大丈夫だから早く下行って」 ちょっとした苛立ちを感じたものの、年頃なのだと自分を納得させ食卓へと戻った。 「頭痛いから学校休むってさ」 「そうか。最近遅かったようだからな。これに懲りて改めるだろう」 「俺が似たようなことやらかしたら、絶対学校に行かせるだろう」 「そうだな。お前なら行かせる」 「意地悪言わないの。言い方は悪いけれど、お兄ちゃんと違って美奈は繊細なのよ」  男女差別、妹贔屓に悠は軽く怒りを覚えたが、どうにか無視して母が用意してくれた朝食に意識を向けた。絶妙に焼かれた目玉焼きはかなり美味しそうに見えた。  朝食を食べ終え登校の支度を済ませる頃には、今朝の不快な思いは殆ど消えていた。夏を予感させる日差しと湿気が家の中にまで侵攻を進め、既に日本全土が梅雨の湿気に覆われていると天気予報は伝えていた。何もせずとも汗がにじむ気温だ。サラリーマンがハンカチを片手に駅へ走る横を、悠はゆっくりと学校へ向かった。帰宅部である彼に朝練などなく、また気難しい所があるためクラスで絡む相手はいても、一緒に登下校する仲の相手はいないので、急ぐ必要もないのだ。 「お、霧島じゃないか!」  名前を呼ばれ後ろを振り向くと、親しげに手を振りながら、同じクラスの竹中直人が走ってきた。あまり趣味が合うとも言えず、交友関係も悠とは重ならない。挙句には悠の逆鱗に触れた際に殴られもしている。しかし何故か直人は悠に積極的に、友人として関わってくる。最初は不信がっていた悠だが、直人に善意しかないと気づくと無碍にするわけにもいかず、趣味の関係から友人とは言わないものの、クラスメイトとして普通に接するようになっていた。
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