クビキリサマA

6/20
前へ
/20ページ
次へ
「ああ、竹中君か。こんなタイミングで会うなんて珍しいな」  二年間通学路として同じ道を利用しているが、直人をこの道で見かけるのはこれが初めてだ。もっとも彼の所属するサークルの性格を考慮すれば多少の不自然はどうとでも説明が付けられる。直人のサークルは、変人の集まる奇怪な所と学校の内外を問わず有名だ。 「ちょっとな。今研究している物について、須川さんや金杉に用があったんだけれどさ。須川さんは陸上部にダイエット出張中で、金杉の所は何かヤバそうだったから近づけなかった」  須川の名前を聞き、悠の頬が引き攣るが直人に気づく様子はない。悠の意識もすぐに、警察の件に向けられた。 「やばそう? 何があったんだ」  そう訪ねつつも、なんとなく嫌な予感はしていた。悠の最も嫌う類の話題であり、なんの確証もなく、憶測だけで語られる非現実。自分たちが理解できず、情報の多くが不確かなのを良い事に好き勝手に創作され、どんどんと膨らまされていく無責任な噂。それは無関係な地域でも語られる都市伝説になっていた。要はオカルト性の感じられる話だ。 「詳しくは解らないけれど、何か警察がいっぱい居て怖かった。殺気立ってたって言えばいいのかな。黄色いテープとかも貼られていて、とにかく近づけなかったんだよ」  最近巷を騒がせている事件の匂いを悠は感じた。原因不明の学生連続死亡事件だ。警察も操作が難航していると言われている。 「それで君はなにもせずに退散してきたのか? いつもの君の言動からすると、『その事件俺が解決してやる』とか言い出しそうなものだけれど」 直人は英雄願望と妄想力が強く、尚且つメディアやサブカルチャーの影響を受けやすい中学二年生。所謂厨二病と呼ばれる人種だった。 「そりゃどうにか中に入ってやろうとしたさ。隣の家から塀伝いに二階の屋根に登ってたら、警官に見つかっちゃってね。マジギレされた。やっぱ本物の現場っていうのは空気が違うな。何されるのか解らない位怖くて、とてもじゃないけどそれ以上何もできなかった」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加