ときめき

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海辺に着くまでも 色々話しした。音楽や映画、テレビ…。初対面と言う緊張感もいつしか取れていた。 海辺に着くと その男は花火とバケツ持ち、子供の手をとり 砂浜まで歩く。 薄暗くなった浜辺は 波の音と 電灯の光り… まだ初夏と言うこともあり 人は ほとんどいない…。 「離れたところで観ててごらん」そう言うと 打ち上げ花火を始めた。 子供がハシャギ 花火の光の中に 子供の笑顔が見える。 ふとその男を見ると 汗を額ににじませ 花火に点火している姿。 幾度となく打ち上げ花火を…。 「ねぇ私も手伝だおうか?」 「いいよ。危ないから、子供と一緒に観てて。」 花火の音と、火薬の匂い、幻想的な光…。 見慣れたはずの花火なのに…、なんだか心うたれるものがあった。 しばし観覧…。 「最後は手で持つやつ、はいっ。どうぞ。」 そう言って 火の点いた花火を 私と子供に…。 「今日はおしまい。もう寝かせる時間になるやろう。そろそろ帰ろうか。」 「うん。ありがとう。」 それを聞くと また子供の手を引っ張り砂浜を歩く。ヒール付きのサンダルだった私に気づき…。 「真ん中どうぞ」と。手を伸ばしてそっと握る…。 (なんだ…。この緊張…。手… 繋いでいる。正直ちょっとドキドキした…。) 駐車場までの距離が異様に長く感じてしまった。 そして、潮風を浴び、なんとも言えない、再度襲われた緊張感に少し汗ばむ手。 車に乗り、窓を開けるより、エアコンを付けた…。 元来た焼き肉屋へ戻る…。
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