好きになっちゃ駄目……っ！

火照り

沙羅乃――“黒狼”は有名だった。

既にこの地域トップで、強いんだけど……

本人はレディースに一切手を出してない（仲間は出してるけど……）。

“黒狼”が倒した奴を病院送りにする話はよく聞くけど、一本、二本の骨折ならむしろいい方だと思う。

全てのチームから嫌われていると言っていい、ナルシストの総長が居て、凄く手が早い。

私も何か度々喫茶店とかに誘われて気色悪くてしかたなかったあいつを、全身粉砕骨折にしたって聞いたから……。

きっと“黒狼”にとっても気色悪かったんだと思う。うん。

「帰るんだろ？電車来るぞ」

「あっはい！」

“黒狼”に声を掛けられ、ハッとした。

度々受け止めてくれたり、定期返してくれたり、送ってくれたり……。

凄く優しい人だと思う。

こんな人が何で族なんかやってるんだろ……。

電車で暫く揺られ、目的の駅で降りて、歩き出す。

「そう言えば名前聞いてなかったな」

また、沙羅乃が唐突に口を開いた。