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街中のもやと同じように俺の思考もぼんやりとしていた。
のらりくらりと歩けども目的がないとまったく意味がない。やることがない。することがない。人間にとってはかなりの問題点だ。
いや間違った。目的自体は存在する。ただ、それにどう結びつくかが考えられない。
俺が必要なもの、それは金だった。
ルノたちの家--ホームの本拠地に--住んでいるから、寝床や食料には困らない。
ただし、なんにせよ金というものがあったほうがいいわけで、特に俺はルノたちに武器の支払いがある。金を稼がないと俺のメンツというものが立たないのだ。
「どっかに楽に稼げる仕事とかはないものかねー」
傭兵家業で培ってきた腕っ節を使ってみようかと、護衛やら警備の仕事を請け負う組合所に行ってみた。だが、ついてそうそう人事の責任者に鼻で笑われた。
それも実力を把握することなく、一瞥されてだ。
「わざわざ人間がこんな場所まで雇ってくださいだあ、冗談につきあわされるこっちの身にもなってくれや。おととい来な」
馬鹿がどんなに偉かろうが、知ったことじゃない。俺にとって敵と視認。きびすを返そうとする責任者の足を、俺の足が弾く。体勢の崩れた体。そのままでも倒れるだろうが、俺はやつの首に手をかけてやり、強く床に叩きつけてやる。体の側面を床に接触させてている間に、くぐもった声がでていた。そして俺は責任者の手首をねじって背中に座りこんだ。
「その人間にこかされたあげく、反撃も封じられるってのはさぞ嫌なことなんだろうな」
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