第2章

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「くっそったれ……だが、次この事務所に入りこんだ時は覚えておけよ。2度目はないからな」  責任者の口元が震えていたのは怒りからだろう。俺はせせら笑いながら部屋をでた。    そうして、今の街をのらりくらり探索時間が始まってしまった。  自然とため息がでる。  仕事のツテなどあるはずもない。  1番自信のある傭兵としてのスキルが使えないとすると、俺はいったいどこで働けばいいのか。争いごとがない世界ではないが、俺自体が問題か。  人間の問題としてなら顔を隠せばいいが、十指者であることが障害だな。  通常、ルノたち絶対支配者と呼ばれる連中は国から給金が貰えるらしい。しかし、ランクが上から順に貰える額が違ってくる。こちらのホーム順位は低いので、はっきりいって生活が苦しい。  そのため、オリアも近くの飲食店で働いているそうだ。家で食べているからわかるが、腕前は確かだ。 「俺にもなんか役にたちそうな特技があったらなー」  幽体人を路地裏につれて、金をせびるか。いやいや、それは問題がありすぎるだろう。 「なにを迷っているのか、若人よ」  背後からの声だ。俺は往来を振り返ってみたが、誰もいなかった。空耳か、そんな言葉を繰りだそうとすると、湿った生暖かい風が耳元を襲った。 「こっちじゃよ。こっち」  元の正面に向き直ると、見覚えのあるじいさんがいた。 「色ぼけじじいか」 「そんな名前に改名した覚えはないわ。リドルじゃ。リドル。幽玄会武器屋のリドル。頭が悪そうだから3回いってやったぞ。感謝しろ」 「俺は耳も悪いからもう1回いってくれよ」  俺はすでに鞘から剣を引き抜いていた。 「ちょっと待て。いたいけな老人に刃を向けるんか。暴力なんて振るっていいんか」 「吐息を吹きかけて悦に入ってる老人なんて、この世にいらねえだろ。口から魂を絞りだせ」  俺は剣を強く握りしめて、豪快にぶん回した。斬るというよりは叩くといった感じだ。感情に任せた部分もあるが、それよりも知りたいことがあった。前から動きが不可解すぎる。動いた部分が欠如しているかのように、目で捕らえきれないのだ。  そして、今回。
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