第2章

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「いいぞ。だってわしルノちゃんたちのファンなんじゃもん。ホームの順位があがるほど応援のしがいがあるわい」 「幼児愛好とかか」 「そんなわけあるかい。純粋に孫を見るような気持ちじゃわい。オリアちゃんは別じゃがなー」  鼻歌でも飛びだしそうな響きだった。こんな色欲に溺れたジジイに好意を抱かれるなんて、あいつも気の毒に。 「それで、どうするんじゃ。ちなみに剣の代金を月々の給金から取るんで、ルノ達に迷惑をかけないぞ」  気乗りがしない。しないではあるが。  この機を逃すともうない気がする 「わかった。よろしく頼むよ」  俺は唇からいろんなものを失った気がするが、もはや仕方がない。 「よし、決定じゃ。さっそく我が城へ、いざゆかん」  リドルが軽く跳躍して、俺の背中にのる。骨ばったからだが背中の肉に伝わっている。こんな体で、なんでこうも動けるのか。 「ケガ人なんだから気をつかえよ。ジジイ」 「おっほっほっほ。若人こそ、我慢と苦行を知れ」  嫌な年長者だ。だが、俺はいわれるがまま、リドルを乗せて旅立つ。雇い主には変わらないんだから。 ★ 「ついて早々なんだって」 「早々もなにもあるか。さっそく仕事にとりかかれといっただけだ」  幽玄会武器屋の休憩室で突然の話だ。リドルを背負う任から解放されたかと思えば、すぐに店番を要求された。 「っていわれても、俺はなにも知らんぞ」 「わしだって、この店に居ついて客と語らうだけが仕事じゃないわい。武器の受け入れやら支払いやら、色々と雑務をこなさなきゃならんのじゃ。それともおまえさんがやるかの」 「できるわけあるか」 「じゃろ~。安心せい。店にはお前の先輩であるヒューイを残しておくから、頑張るんじゃぞ」 「ったく、だったら俺は明日からでもいいだろ」 「なにごとも早いうちからやっておくべきじゃ。あとになってからでは状況が変わってしまうからの。ほいじゃ、わしはこれで」  リドルがリズムを取った足取りで外へと消えていく。残されるのは沈黙。ヒューイとかいうやつはいないので、まずはそいつから話をしなければならない。ジジイはせめて紹介してから行くべきだったろう。
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