第2章

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 俺は2階の事務所から1階に降りた。店自体は営業していて、ちらほらと人は入っていた。 「まったく、ヒューイねえ。誰だよ」  俺がぐちぐち声を漏らしていると、見覚えるのある顔があった。剣を買ったときにいた店員だ。 「なあ、もしかしてあんたがヒューイか?」 「はい、私ですけど、あの先日のお会いしましたよね。もしかして剣に不具合があったとかでしょうか」  幽冥界人であるヒューイの顔は普通の生物よりぼんやりとしていたが、不安が強くでているのがはっきりとわかった。 「いやぜんぜん、問題はなくて。俺がここで働くことになったからその報告というかなんというか。アルト・カラサエなんでよろしくお願いします」 「ええっ、そうなんですか。すごいな。十指者をやっているんですよね。この店にもようやく一流店の仲間いりかー」 「なんかよくわからないが、どういうことだ。俺が入ったらなんかあるのか」 「ああ。アルトさんは人間だからあんまり知らないんですね。ジャンルを問わず、有名な店というのは、十指者の庇護を受けたりするんです。一種の警備の行き過ぎた版ですか。もちろん強い十指者が庇護していると、その知名度と恐ろしさから、ゴロツキや犯罪者に避けられるし、なおかつ付近の店での地位もあがるという。二度美味しい風習ですよ」  ああ。少し規模や意図は違うが、俺の世界でもあったな。裏側を仕切っている人間が街を牛耳るようなものか。どうせ、どちらの世界でもなんらかの見返りを求めることに代わりはないだろうが。 「俺は働きにきただけだぞ。というか仕事をしないと金ももらえないし。なにすればいいか教えてくれ」 「ええ、そうなんですか。いやいや、でもでも、周りの人にはいわなきゃわかりませんよね」  最初は地味で影の薄いやつかと思ったが、意外に知略をめぐらせる腹黒いやつだ。いったい俺を利用してなにを企んでいるのか。 「なあ、それで仕事はなにをすればいいんだ」
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