第2章

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「ちょっと待ってください。店内でもめ事を起こすのはですね」  ヒューイが一生懸命になだめすかそうとする。だが、果たしてそれで思いとどまるような人物じゃないだろう。 「なんだおめえはよ。それとも、アルトとかいうやつはおめえか?」 「いいえ。そんなわけはありません。私の横にいるお方こそ、アルト・カラサエ様です。私は単なる下僕のようなものでございます」  どんな10年だったか、なんとなく予想がついた。別に期待などしていなかったが。  ゴロツキの面々がいっせいに俺に向いた。数は六人もいたので、目玉が12個、いやヒューイのすがるような目も含めて、14個の眼球が俺を捉えている。他の客はいつの間にか逃げだしたようだ。判断は正解だ。今から仲良くお茶会など開くわけもない。 「へえ~、やっぱりお前が。なんか見た目より小さいな。こんなのにブラザーズはやられたのか。あいつらも名前が売れてただけなんじゃないか」 「ごたくはいい。それで、なんか用かよ。ちゃっちゃといえよ」 「俺たちはな、黒刃というホームの十指者だ。今はまだ下位のホームだが、てめえを倒して、のしあがってやるってんだ。ひゃひゃひゃーー」  癇に障る笑い声を途中で詠唱停止。どうやったか。俺の拳がそいつの顔面にめり込んだ。前歯が俺の拳にめり込んで、肉を削ぎ、血がでてたが、後悔はしていない。あれ以上は耐えられない。 「なってめ、この人数相手に、1人でやるつもりかよ!! 舐めてんじゃねえぞ」  1人目が口を抑えて苦痛に耐えていたので、続きは坊主頭のやつが請け負っていた。 「ああ、そうだな。5人も相手するのはやってらんないな。体力を無駄に使うだけだ」 「はあっ、なにいってんだ。数もかぞえられないのかよ」  俺は鞘に入ったままの剣を振る。カウンター越しで上空を泳いだ剣が、口元を抑えていた奴の側頭部に直撃する。
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