第2章

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 きりもみ回転して壁に激突するのを、全員で見つめた。血のしぶきが壁に真っ赤な模様を描いている。 「なあ、これで5人だろ?」  俺はカウンターを飛び越えて、坊主頭の眼前に迫る。坊主頭は驚いたようすで、防御をする素振りすら見せなかった。俺の掌底が坊主頭の顎を捉えて、やつの体が浮かび上がる。  だが、これで許してやる性格でもない。掌底を放った手を、坊主頭の首ねっこにまわす。そして、下に向けて圧力を加えて体を折り曲げさせる。迎え打つのは俺の膝蹴りだ。  顔面の骨を砕く心地よい感触。綺麗に決まったぶん、俺も満足いった。 「これで2人目。あとは一気に4人いくぜ」  俺が薄く笑うと、残りの連中の顔が青ざめていた。そんな顔をされても、加減は期待できないぜ。  まず一番近くにいた1人に、俺はかがみ気味で近づく。相手はこん棒を振るったが、焦燥のためか俺に向かっていない。俺は冷静に剣の柄で鳩尾を突き、足のつま先で顎を蹴りあげる。  幽冥界人の作りがどうなっているかは知らないが、もし同じなら脳震盪を起こしてしばらくは立てないだろう。  背後から気配がする。右の瞳を横にずらすと、眉毛のない男が1人。短刀をしっかりと振りあげている。集団から離れて逃げだしたかと思えば、回りこんでいたのだ。ずるくはないが、面倒なことをする。  俺はろくに目標もつけず、裏拳を見舞った。野生的な勘が発揮した。鼻下の辺りに的中して、眉毛のない男がたじろいだ。数秒間の戦闘離脱と予想。  俺はその間に残り2人に取りかかる。すでに1人が迫ってきていたが、動きが遅い。一般的な動作でいえば早いほうだが、まばたき1つぶんですら争うのが戦闘だ。恐らく動揺も加わっているのだろうが、反射神経、体捌き、呼吸、いずれもたどたどしい。  俺は短刀を持つほうの手首をつかみ、そのまま捻り上げ、関節の仕組みの阻害を無視してへし折った。
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