見つけた。

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ある記者発表の席だった。`「みんな同じ空の下!ですよ」'彼女は確かにそう言った。その瞬間僕は全身に電流が走りさらには凍り付いていた。今まで一緒に仕事をしていた相手は出会い系サイトでメールを交わしていた相手だったのだ。正に彼女だ絶対に間違ない。その言葉は彼女がいつも僕にかけてくれていたエールに他ならない。二度と会えるはずもなかった大切な人が今、目の前にいる。僕はにわかには信じられなかった。というより心臓だけが走りまわり驚きで動けなくなった。僕は彼女の本名を知らないし唯一40代という事のみで詳しい事は分からない。そうか彼女があの人だったのか!もはや記者からの質問など耳に入らなかった。終了後、彼女が「色々とありがとうございました。またご一緒出来ると嬉しいです。」と軽く会釈を返してきた。撮影はもう終わっていて彼女とは今後会う事はないだろう。そう思うといきなり胸が苦しくなった。「そんなの絶対に嫌だ!」彼女を引き止めたい。思うより先に「あの、今度食事でもどう?」彼女を誘う言葉が口から出ていた。彼女は笑顔で「そうだね、何処に行こうか?」と快く受け入れてくれたのだ。「ア、アドレス教えてくれる?」「うん。いいよ。」僕がずっとしたくて頭を悩ませた事を今、糸も簡単にやってのけてしまった。これが彼女のアドレスなのか!遂に手に入れたぞ!僕は飛び上がる気持ちでいっぱいだった。地方の県でイニシャルのみが登録されていた彼女のコメントに惹かれ「友達になってくれませんか?」とアタックしたのは丁度一年前になる。どうせ返事なんかこないだろうとなめ切っていた。「私でよろしければお願いします。」と彼女からメールが返って来たのには正直、胸が高鳴った。彼女には僕の名前を明かしている。役者だという事も伝えた筈なのに声をかけてくれなかった。もしかしたらあの別れでそんな気もしなくなったのだろうか?初めから信じてくれていなかったのか?とにかく彼女には沢山の聞きたい事がある。「さっきの質問の答」思い切って聞いてみる。「さっきの?」「そうさっきの!そのみんな同じって...」ようやく言葉になった。「ああ。あれ?みんな同じ空の下って思えば気も楽になるからね。私はいつもそう思ってる。」彼女は言い切った。やっぱり彼女が言った言葉は一言一句違ってない。僕は確信した。もう絶対に離したくない。彼女をつかまえていたい。こんな気持ちになったのは久し振りだ。
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