見つけた。

3/17
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
僕がサイトに登録した理由は単に話し相手というか友達がほしかったからだった。役者という仕事をしていると競争社会で何一つ話せる人がいないし心から腹を割って打ち明けるなんて事は絶対に出来ないからだ。これまで十数年も走り続けて来たがここの所ふと寂しくなる事があった。空虚感というのだろうか。普通の人と友達になりたい!なんでも言い合える人がいないか。初めての出会い系は抵抗があった。が、もしかしたら小さな希望が見えるかもしれないとほんの軽い気持ちでサイトに行ってみたのだ。登録するとすぐに女性のプロフとコメントが紹介されていた。会いたい。デートしませんか?エッチできます。大胆な思いがたいがいのコメントだった。僕はずらりとならんだエロ文を読みながらもううんざりしていた。「まともな子はいないのか?」とため息をもらしていた。そんな中、なんと爽やかで端的なコメントなんだ!`はじめまして。よろしくお願いします。'正に掃き溜めに鶴だった。この娘だ!この娘しかいない!僕は一目で決めていた。一時間もしないうちに彼女から返事が来た。`私でよろしければよろしくお願いします'僕は飛び上がりそうになった。君がいいに決まってる!今思えばこの瞬間から僕は彼女に夢中になっていたのかもしれない。こんなに親しげに話せる人がいたなんて僕はときめいて隠しくれないでいた。自分が芸能人で今も撮影中だという事を話し自分の様な男でも友達になってくれるのか正直に話すと、彼女は`同じ人間ですから大丈夫です'と至って普通の対応をしてくれたではないか。僕は自分がこんな気持ちになるとは思わなかった。これが恋というものなのだろうか。僕はたった一言交わしただけの彼女に夢中になっていた。何十億分の1の出会い。僕にとっては一日千秋の思いだった。それからの僕はそれまでとは打って変わり毎日が楽しくなり仕事にも拍車がかかって来たも同然だった。朝目が覚めればすぐに朝メールしていた。 おはよう。今日も撮影があるから移動するよ。一日一緒に頑張ろうね。他愛のない話を彼女に送る。すると謙ちゃんが頑張っているから私も頑張れるよ。という返信を返してくれた。この一言で百人力だった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!