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「何やらややこしい話だね」 「言うなれば、あなたはモブの中のモブなのよ」 「やめてくれないか?なんだかとても惨めな気分になる」 モブ。この世界の底辺。そんな人々にも一応の心は宿っているらしい。いや、彼自身もモブであるのだから、何ら不思議など無いのかもしれないが。 「それで、主人公とやらはどうだった?」 その質問に答える前に、彼には確認したいことがあった。彼女らに、思考が、記憶が存在するのなら。 「君は君自身について、それから世界について、どれくらいのことを知っている?」 彼女は口元に手を当てて、少し考えるような素振りを見せる。 「あなたの知っていることと大差ないんじゃないかしら?この世界の基本知識とか、主人公の存在とか」 「けれど、君自身については全く解らない、そうだろう?」 彼女はほんの少しだけ目を開き、眼前に広がる青い海に向けていた視線を彼に向ける。 「ええ、せいぜい『釣りを眺める女』であることぐらい。他は何も」
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