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「あれ?知らなかったの?」 先程の口ぶりからすれば、彼女は自分の目的を知っているのではなかったのか。彼の瞳に困惑の色が映る。 「あなたの『主人公に会いたい』という目的は知っていたけれど、その理由なんて私、聞いていないわ」 ああ、と彼は相づちを打って、大まかな理由を説明する。主人公になりたいという事を。その為には、物語に積極的に関わっていかなければならないという自身の推論を。 「主人公になる…ずいぶん大それた事を考えるのね」 「仕方無いだろう、羨ましいものは羨ましいんだから。君はそうは思わないのかい?」 「思わないことは…そうね、ないかもしれないけれど」 そう言ってまた彼女は微笑む。 「言ったでしょ?あなたと私は違うのよ。その気持ちが目的に、行動に結び付かないの。私はきっと『釣りを眺める女』を受け入れてしまっているんだわ」
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