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再び大通りに繰り出した彼は、その道を抜けた先にある酒場へと足を運ぶ。先程までの慌ただしさはすでに失われ、いつも通りのバザーの賑やかさがいささか鬱陶しい。
酒場に向かうのには当然理由がある。酒場は町の社交場であり、そこには人も、仕事も集まる…はずだ。彼自身、役割の決まっているこの世界に仕事なんてものがあるのかは疑問だが、しかし一方で彼は、この世界では酒場に仕事が集まるのが常識だと『理解』している。
「なら、仕事はあるはずだ」
独り言は喧噪にかき消され、他の誰にも届くことはない。
そういえば、と彼は頭を掻く。
主人公達の行動を彼は把握していない。いつ物語が転がりだすか分からないのに、呑気に仕事などしてて良いのだろうか。手遅れになったりはしないだろうか。
妙な不安に駆られたかのように、彼は歩く速度を少し速める。
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